夢見草子

桜の別名を夢見草といいます。徒然なるままに休み続ける日々。

藍色の海の中へ

先週末に女4人で温泉旅行へ伊豆に行った。私は温泉が大好きなのだが、とくに冬の温泉は最高だ。熱海の花火大会にいくのがきっかけになったのだが、宿も部屋も張り切って自分で予約した。(自由に決めさせてくれてありがとう)

とにかく初日から奇跡みたいに楽しいことばっかり起きた。土曜の昼前の大混雑のグリーン車で奇跡的に4人ボックス席を確保できたり、海の幸を食べすぎてカロリー消費するために恋ダンスを全力で踊っちゃったり、そのテンションを持ち込んだカラオケでダンス曲ばっかり入れて踊り狂って暖房を冷房に切り替えるほど盛り上がったり、大浴場の露天風呂を偶然貸し切っちゃったり、そこで流れ星をいっぱい見たり。(客室露天風呂もあって、テンションが上がりすぎて棚に足の指をぶつけてヒビを入れたりもした)

天体入浴を終えて部屋に戻ってからも、部屋の電気を全部消して、せっかくあったまった身体なのに迷わずベランダに並び、再び星空を眺め始めた。私は視力だけはいくつになっても衰えずにとてもよくて、おそらく人よりたくさんの星が鮮明に見えているのだと思う。「星の読み方」という記事でも書いたことなのだけれど、そんな生まれ持った素質を活かせず、星座は基本オリオン座以外ほぼわからない。でもその夜は、よく知ったオリオン座を見失いそうになるほどに、強く大きな光を放つ星が無数に広がっていて、小さな小さな星まで目一杯白く輝いていた。

思う存分星空を楽しんだ私たちは部屋に戻り、じゃんけんで決めた各々の布団に潜った。部屋に横一列に並んだ布団の、一番窓側が私の寝床だった。日の出を見たいね、朝日の光で目覚めたいねという話になり、カーテンは全開にしたまま、消灯して眠りについた。

3人はわりとすぐに眠りに落ちたみたいだったが、私はなかなか眠れなかった。元々旅行先ではスッと眠れないタチなのだ。いつものように携帯を触ろうとしたがなんとなくやめ、体を反転させる。真っ暗な部屋の窓の向こうに、変わらず怖いくらいの星空が蠢いていて、気まぐれのように流星が走る。

もはや空ではなく真っ暗な海を見ているようだった。

細かいのに輝く星がいくつかの箇所で固まっているのがまるで泡のようだったし、時間の経過とともに少しずつ動いていく星が波にゆっくり運ばれるようにすら感じた。藍色の暗闇は海の底の冷たさのような色で、身体は布団の中であたたかいのに、見ているだけでさっきまでのベランダの寒空の冷えた空気がありありと感じられた。時々弧を描くように流れ落ちる星に気を取られたら、起きている自分だけが紫紺の波に飲み込まれてしまいそうだった。見ている世界が眠りの中なのか現実なのかあやふやになり意識がとろけ、気づけば清々しい朝だった。

贅沢朝ごはんを普段以上に贅沢な量食べ、電車の時間を忘れて海に向かう。たくさん写真を撮って、熱海へ向かい、ずっと行きたかった喫茶店に皆を付き合わせ、とうとう足を踏み入れる。内装も食べ物もとっても自分好みで美味しく、またたくさん写真を撮って笑い合い、お腹を満たす。

そのあとなぜかノリでいつものようにカラオケに行く。昨晩の興奮冷めやらぬまま、星にちなんだ歌ばかり選曲し、飽きたらいつもどおりの私たちらしく、好きな歌を歌った。

半日で歩き慣れた坂道を下り、港沿いの居酒屋に入る。酒の肴に恋愛話をグダグダしながら(8割私がしゃべった気がする)、またまた海の幸を頬張る。何度食べても、美味しいものはやっぱり美味しい。

そして、お目当ての花火が始まる。あまりにも近い。目の前で打ち上がる、というよりもむしろ、こちらに静かに舞い降りくるほどに夜空いっぱいに光っては消え、目の前には冷めた黒いひらひらとした火薬が漂って落ちる。

真冬の海で花火を見るなんて初めてだった。きっとこの先も忘れられない、ほんとうに美しい景色だった。それを見上げ、花火に照らされるみんなの横顔も、ほんとうにきれいだった。

一人で飲まれそうだった星空は、その夜は雲で見えなくなっていた。耳は消えたから響く打ち上げ音の力強さに奪われ、高く燃え上がっては目の前で開く大きな火の花に視界は埋め尽くされる。顔中の神経が花火に支配され、こんな幻想的な世界が今目の前で広がっているなんて不思議で、もう何も怖くなかった。ほんとうに楽しかった。幸せな時間を過ごした。

またこれからも、色んなところに行こうね。一緒に連れて行ってね。

写真は私のお気に入りの、みんなが撮ってくれた、撮り合う私たちです。

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