夢見草子

桜の別名を夢見草といいます。徒然なるままに休み続ける日々。

6/29

実家の隣の家には両親より少し年上の夫婦が住んでいたのだけれど、去年2人とも亡くなってしまった。自宅でテーラーを営んでいて、畳の部屋には色とりどりの生地が並べられていた。子どもの頃は、おばさんがキティちゃんの生地で小さなカバンを作って、よくプレゼントしてくれた。二人のお孫さんが遊びに来ると一緒に遊んだ。祖父母が出かけてるタイミングで学校から帰ってきた時、鍵を持ってなくて途方にくれていると家に招き入れてくれた。うちの猫や犬を、見るたびに可愛がってくれた。奥さんは数年前に事故に遭い、そこからずっと別の県の大きな病院に入院していて、とうとう天国へ旅立った。旦那さんは奥さん亡き後も明るく振舞っていて、新しい車を買ったりなんかもしていたのにある日体調を崩して入院し、そのまま奥さんのところへいってしまった。私が横浜に引っ越した後だったから、どちらの葬儀にも父だけが参列した。

ある日実家にいくと、隣の家はリフォームされて売りに出されることになっていた。リフォームといっても、内装だけらしく見た目は以前のままだし、売り出し中のチラシは掲げられているものの、表札は前のご夫婦のもののままだった。

今日、父から隣の空き家に新しい家族が越してくることを知らされた。先日ご挨拶に来て、果物をもらったらしい。いい人たちだったという父を見て、あの家にまたすてきな人たちが住んでくれるなら良かったなと思う。

でも同時にかつてのお隣さん夫婦が本当にどこにもいないことがはっきりと感じられて寂しくもなった。

今の家の近所にも、少しずつ顔見知りができてきた。今の街に愛着もあるから、当分離れる気はない。それでも実家がある街が変わっていくことが寂しいなんて、ほんとうにわがままだ。