夢見草子

桜の別名を夢見草といいます。徒然なるままに休み続ける日々。

エンドロールが流れても

クリスマスの夜、一冊の本を読み返した。PAPER PAPER刊行の『エンドロール』。書くことを大切にする素敵な男性たちによるエッセイ集。横書きなのであまり本を読まない人にもとても読みやすいと思う。文章はもちろん、短歌や小説、写真、手紙といった著者各々の文体を、一冊で楽しめる。

「エンドロール」というと、映画館で見ることが多い。この本に載っている文章は、映画の最後に流れる文字たちのように、早くもなく遅くもない緩やかな心地よさで文章が私の視界を流れていくのだろうか。そんな風に想像して、本が届くのを心待ちにしていた。でも実際はちょっとちがった。

ずっと住んでいる家の小さな飾りみたいな窓から、いつもと様子が何か違う世界を、こっそり覗き込んでいるかのような読書体験だった。

書いているのが全員男性で私が女性だから、新鮮に感じた部分は多いのは事実だけれど、それを抜きにしても新しい風が吹くような文章がたくさんあった。エッセイなので、「心して読まなくては!」と気張ることもなく、肩の力を抜いて開ける本です。毎晩ベッドでひっくり返った状態で少しずつ読み、そのまま寝落ちするというパターンだった。時に迫力を感じたり、ぐわっと心を掴まれるところもあった。そんなそれぞれの生活が記された中で、私の知っている地名や、同じではないけど似たような経験と言って差し支えないものや、よく聞く人が陥りがちな状況等が綴られているとどこかホッとする。よかった、同じ世界の住人だなぁと思えるのが愛おしかった。

帯が素敵だったので栞にしたら、空の上に太陽が出ているようになった。本を開くたび、日の当たる場所へ帰るような気持ちになれるので、真似してみてほしい。

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文章から、深い情熱をたくさん感じた。時に全面に溢れていたり、淡々と眠っていたり。若い男性の体温を感じる、素敵な一冊だと思いました。あと数日で、その本を作った人たちに会えてお酒がのめるなんてもう、これまで生きてきた中で1番信じられない出来事だ。きっと、その日のことを忘れないと思う。

映画のエンドロールは始まりの合図でもある。物語の終わりのしるしであり、生活再開のお知らせみたいな。この後の予定とか、色々考えなきゃな。この世界の余韻をもっとたのしみたいのに。

タイトルを踏まえて読んだからか、著者の数人の男性が順番に文章を並べて最後にじゃああなたの番だよとバトンを渡されるような読後感があった。

「自分の番だなあ。明日も仕事だなあ」と思うけれど、

「でも頑張っちゃお」と思わせてくれる。

飲みたいのに友だちと飲みに行けない夜なんかに読むのが最高だなと思う。そういう夜に読み返したいし、そういう時に家で呑んだくれたりスマホばっかいじってないで是非一読してほしい一冊でした。

という↑までが2018/12/25に書いた分でした。翌日の夜に何人かお酒の席でお会いできました。酔っ払って上に書いたことあんまり話せてない気がする…。でもご本人とお話しして、文章の印象がガラッと変わってるたものもあった。でもそれはまた、ご本人たちに直接お伝えできればと思うのでまた飲みに誘ってください。