夢見草子

桜の別名を夢見草といいます。徒然なるままに休み続ける日々。

異世界への入り口

メリークリスマス。今夜はクリスマスイブ。そんな夜、先日の骨折で家でおとなしく過ごそうと考えていた私は現在渋谷のスターバックスでこの文章を書いている。年末年始の休みが合わない友人がつい先日、「24の仕事終わりなら空いてる!」ということになり、会うことになった。そういうわけで、定番のスターバックスラテをすすりながら友人からの連絡を待っている。eチケットが利用できたので、バニラシロップを追加した。ほんのり甘くて、とても美味しい。

渋谷の駅からも、かつ表参道のメインストリートからも母校も少し離れた母校・青山学院付近のスターバックス。相変わらず静かで人も少なく、クリスマスイブの夜というより、連休最終日の夜という感じだ。

ここら辺に来ると、やはり落ち着く。人混みありきで、この街はやはり落ち着く。今日は人が多すぎるけれど。大学〜大学院の6年をこの学院で過ごし、その内4年はこの青山のキャンパスに通った。特に、大学の真向かいのビルの地下にある青山ブックセンター本店には足繁く通った。空きコマはほとんどここにいたと思う。細長いエスカレーターを降り、中庭のようなテラス空間がありそこのカフェでは港区ママたちが冬でもお茶をしていたりする。そんな中庭に面してガラス張りになっており、陽の光も程よく入る本屋にしては明るい場所だと思う。決して自分が読まない海外の雑誌さえたくさん置いて会った。私が求めた本が必ず置いてあるかと言われるとそうでもなかったけれど、広々としたワンフロアに全てのジャンルの本が置いてる。世界地図の縮図のような本屋だった。そこで本を探すのが楽しかった。書店員さんたちのこだわりも感じられるフェアなどもよく開催していたし、この地域にしてはとても馴染み深い場所の一つだった。

非常に不真面目な学生だった私は、興味がない必修授業の時は出席表だけ記入して荷物を大教室に置いたまま抜け出してここで1時間ほど過ごしてまた戻る、というようなこともしていた。親が学費を払っている、と思うと少し申し訳ない気もするけれど、それで単位は取れるしで個人的に充実していた。(でも、おすすめはしない。)

もう一つ気に入っていたのが、青山ブックセンターのトイレだった。都内のだいたいの商業ビルや駅ビルのトイレはだいたい混んでいる。特に女性用トイレはそうだ。でも青山ブックセンターのトイレはほぼ100%の確率でガラッガラに空いている。青山ブックセンターのトイレは建物の奥にあり、新しくてピカピカではないのだけれど、そこそこ広い。人の溢れる東京で、パーソナルスペースは大切だ。特に女性は荷物が多かったりするので、ありがたい。もっとありがたいポイントとして、冬場は洗面台の蛇口からお湯が出る。トイレの洗面台の蛇口からお湯が出たとき、ふとささやかな感動を覚えるのですがわかりませんか。

私はお腹をいとも簡単に壊すほどに胃が弱く、もっというとストレス耐性がないゆとり世代だ。かつ極度の緊張しいでド級の心配性のA型だ。正真正銘のビビリだ。見たことある人にしかわからないかもしれないが、「アメトーーク」の「ビビリ-1グランプリ」は笑いながらも、心底共感が止まらない。話が逸れたけれど、とにかくお腹が弱い。あとお酒も最近どんどん弱くなっている気がする。とにかく、そういうこともあり自分の行動範囲内においてはいつでもスッと入れるトイレの場所を把握しておかないと、またあれこれ心配になって余計にお腹を壊しやすくなる。そういう負のループが土星の輪っかのように私の周りをくるくる回る人生を送っている。

もして、もう一つ気に入っているのが両面の壁全体に貼られた大きな鏡だ。鏡が向かい合わせになっているので、無数の鏡が鏡に映っている。薄暗い空間のせいかどんどん中心に向かって歪んでいく。

学生時代にここに来た時、ここのトイレのこの鏡の奥が異世界への入り口のようだ、と思った。このトイレ内は地下のフロアの奥にあるからか電波がなく、圏外だ。(以前友人といるときに急に体調を崩してここに駆け込んで、落ち着いたのでもう大丈夫だとLINEしようとしたらできなくて、ここで死んだら誰にも見つけてもらえないなと思った。)なんの音楽もかかっていない人気のない空間に、ただ鏡だけがズラリと写っていて気味が悪いけれどなんとなく興味深い。

人がいなさすぎたので撮影までした。この鏡の奥へ行けばいくほど黒いかんじ、何か別の世界へ行けちゃいそうではないですか?

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授業がつまらない時、就活がままならない時、論文に追われている時。フラッと本屋に来て、この鏡の前に来て、別の世界に行きたいと何回も思った。行き方はわからなかった。やがて別の人が入って来たりして、現実でどうにかするしかないと諦めがつき、素直に日常に帰った。

今日は友人との食事の前に予約した表参道の美容院を済ませたあと、あまりにも多い人混みに疲れてここに駆け込んだ。二度と出たくないと思いながら並ぶ本を楽しく物色し、ちょうど探していた本を見つけて、一冊購入した。早く読みたかったので、絶対空いている!と信じてここのスタバに向かい、思っていた以上に空いていてホッとしている。

結局先ほど買った本もろくに読まず、ふと本屋で思ったこんなことをこんなふうに書いている。そんなことをしている間に友人から連絡も来た。なので、そろそろ向かう。

今夜は学生の頃から好きだった店に行く。大好きな友と。学生時代の友人と会う回数は減ったけれど、会った時に話すことはどんどん増える。でもきっと今日も話し足りないんだろうし、帰ってからあれ話してない!ってなるんだろうか。そういうことは、会う前からわかる。異世界への入り口の話を、いつもしようとしては忘れてしまう。そういう呪い?!とか思ってたので、今日ちゃんとここにかけてよかったと思う。