夢見草子

桜の別名を夢見草といいます。徒然なるままに休み続ける日々。

親友

 

地元の親友と食事をした。前日の夜、親友の彼氏も私と飲みたいと言っているから連れてきていいか聞かれ、もちろんOKした。

 

彼と会うのは初めてではなかったし、なぜ三人で会いたい、ということになっているのか、なんとなくわかっていた。

 

会って店に入ると、早々に婚約したことを報告された。細くて小さい左薬指にはきらきらとした指輪が光っていた。

 

instagramで、2人が先日ディズニーシーに行き、彼のサプライズでミラコスタに宿泊したことは知っていたし、きっとそうなのだろうと思っていた。

 

二人から、私にはLINEとかじゃなくて、二人揃って報告したかったから今日会えてよかったと言われ、本当に本当に嬉しかった。

 

親友の彼氏は、私に紹介したい男の子がいると話していた。話を聞いたり、写真を見せてもらったりした。とてもいい人そうだった。

親友も、彼と一緒にその人に会ったことがあり、絶対私と合うと自信満々に勧めてくれた。二人が私の幸せを願ってくれているのはよく知っているので、その二人が私のために考えて盛り上がっているのが照れ臭く、嬉しかった。

 

ただ、あまり今はそういうことを考えたくなくて、気の乗らない返事をしてしまった。それに、もしその人と付き合って別れたりなどしたら、親友とその夫になる人の二人を悲しませる事になるのが、何より嫌だなと思った。

 

解散して、反対のホームで電車に乗る彼を見送り、そのまま親友と二人で地元に帰った。

「紹介の件、どう?」

と楽しげに聞かれたので、あまり期待させてはいけないと思い、正直に話した。今が一番幸せな中で、せっかく二人が盛り上がっていた話に水を差すようなことを、こんな楽しい一日の終わりにしてしまって失敗したかなぁなんて思った。

でも、親友は「それは大丈夫でしょ?」と、とてもなんでもない風に言った。そんなこと気にしてたの?と、明るく笑われた。

「だってお互いに誰を選んでも、どこにいても、私たちは変わるような関係じゃないじゃん。これまでも、これからも」

辛いことがあると、一番にメールをし、LINEが主流になってからは、LINEをしてきた。

彼女はいつでも味方になってくれたし、私だって何があっても彼女の味方だった。

助けなんて、誰にでも求められるものではないし、ましてだんだん大人になっていくたびに、人に求めず自分で解決しなきゃという気持ちが先行するようになる。

彼女のすごいところは、私が助けを求めた時だけでなく、なんてことない瞬間にあたたかく抱きしめてくれるような言葉をくれるところだ。

「ま、そうなんだけどね」

と、私もなんてことなく返事をした。わざとではなく、完全にへんな気が抜けていた。

駅の近くに住む親友とまたすぐ会う約束をして別れ、一人で歩き出す。深夜の地元の住宅街のあちこちから、金木犀が香っていた。もりもりと茂っていて、可愛げがないくらい、たくさん咲いている。

 

どんどん寒くなっていくことが、心細い季節に、なんて素敵な夜を過ごせたのだろうと、心から思った。