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明日を有給にして退勤と同時にゴールデンウイークが始まった。ちょこちょこ出勤しなくてはならないので、10連休ではない。そんなに連日の休みが欲しいわけでもないから、別にいいっちゃいい。
桜の季節が終わった春は、夏ほど暑くないだけのでそこそこ暑い。それもここ最近は急に気温が上下する。
暑い日は、帰宅してから寝る前までベランダの窓を細く開けて網戸にして過ごす。うっかりそのまま寝てしまうこともあるけれど、寝付きが悪いのでふと夜中に目を覚ます。線路や大きな道路が近いから、日中ずっと聞こえている電車の音や車の音が眠っている間に落ち着いていてしんとしている。誰もいない。あぁ真夜中だなぁ、とわかる。
静寂に浸るようにさみしく思っていると、ほんのり煙草の香りが鼻をつく。煙はまるで見えない。それでも、窓の外の誰かマンションの隣や上下階の人が煙草を吸っているのがわかる。そのにおいは誰かの存在として私の鼻に届く。
以前好きだった人に長く貸していた本が帰ってきて、それを自宅で入取り出した時にふわっと自分の家とは違う「家のにおい」がして、その人の家のにおいだということと、そこに自分が行くことはないのだという事実を思い知らされた気がして、泣きそうになったことがある。
影も姿も見えないけれど、はっきりと香る誰かの影。それは時にほっとしたり、ヒリヒリさせられたりもする。
そんなことを考えながら、ほこりのたまった部屋をたまに思いついて一気に掃除したり、昨日の残りの野菜でナポリタン作ったり、入浴剤をたまには多めに入れてお風呂に浸かる。
この家はどんなにおいの家なのだろう。